今、巷を賑わせているデング熱について

  デング熱とは、ヒトスジシマ蚊(ヤブ蚊と呼ばれこともある)、ネッタイシマ蚊によって媒介されるウイルス感染症で、日本では、戦時中の1942年~45年に神戸、大阪、広島、呉、佐世保、長崎などで約20万人が感染する大流行があって以来、69年ぶりの国内感染例という事だそうです。
 ネッタイシマ蚊は今のところ日本では生息が確認されていないそうですが、ヒトスジシマ蚊は北海道と青森以外の全国各地に分布しているという事です。
 インフルエンザのように人から人へ感染することはなく、発症するのはデングウイルスを保有する蚊に刺されたときだけです。万が一、家族が感染したとしても、感染者を刺した蚊に刺されなければ大丈夫だという事です。
 症状は、3~7日の潜伏期間のあと、38度以上の突然の発熱、頭痛、目の奥の痛み、関節痛、吐き気・嘔吐で、インフルエンザなど多くのウイルス感染症と同じです。胸の辺りや手足に発疹が出たり、食欲不振、腹痛、便秘を伴ったりする人もいるそうです。
 「デング」はスペイン語の「denguero」(英語でdandy)が語源とされ、背中の辺りの激痛にのけ反る姿がダンディな人が気取って歩く姿に似ていることからその名がつけられたという事です。  まったく症状が出ない人もいる一方で、かなりの激痛に苦しむ人もいるようです。
 ちなみに、アフリカで感染が多数の死者を出しているエボラ出血熱とはまったく別モノなので、混同しないように。
 デング熱には特効薬やワクチンはなく、治療は対症療法が中です。ただ、アスピリンの入った解熱鎮痛剤や風邪薬は出血のリスクを高めるので、デング熱かどうか分からない段階で市販薬を使う場合にはアセトアミノフェンを主成分とした解熱鎮痛剤を使ったほうがいいという事ですが、デング熱を疑ったら、まず、受診をしましょう。
 多くの感染者は1週間前後で回復するそうですが、現時点では、とにかく蚊に刺されないようにするのが一番です。
 感染の危険性が高いのは、人と蚊の多い都会の公園や草地。ヒトスジシマ蚊は場所によっては11月まで生息し続けるとの事。
 屋外では長袖長ズボンで靴下を履いて肌の露出を避け、虫除けスプレーで防御しよう。ランニングやウォーキングのときにはタオルなどを巻いて首の露出も防ぐとよいでしょう。バルコニーや庭に、蚊が卵を産みつける水の入ったバケツ、空き缶、空き瓶などを放置しないように注意し蚊を増やさないことも大切です。
 いまのところ、国内感染例に関しても、海外でデングウイルスに感染した人を刺した蚊に刺されたことでデング熱を発症したのではないかとみられており、さらに感染が拡大する恐れはゼロではないとの事。蚊に刺されて高熱が出たときには、早めに医療機関を受診しましょう。「たかが蚊」と笑っていられない時代は近いのかもしれませんね。